いつもお世話になっている美容サロンの方が4月末に退社されるとのことで、最終日にプレゼントとメッセージを届けに行ってきました。お店のスタッフが退職するからと言ってここまでするのは実は初めてなのですが、それほどいつも丁寧で楽しい接客をして頂いていたのでどうしてもお礼がしたかったのです。
このサロンは全国に店舗があり、接客対応は高レベルでマニュアル化されています。そのためオペレーションは全員同じで失礼な対応をされることはほとんどありません。と言っても店舗によりレベルの違いは多少あり、私の通っていた店舗は特にレベルの高い、かつアットホームな店でした。その中でも最上級の接客をしてくださっていたのがこの方でした。
最上級といっても、一流ホテルのような堅苦しい対応ではなく、楽しく笑いが絶えないような対応です。友達のように話して笑って、毎回楽しい時間を過ごさせて頂きました。恐らく、1人1人のお客様に対しお店にいる時間を最高に楽しく過ごして頂こう、と常に考えてくださっていたのでしょう。そういった心のあり様が接客の質を大きく左右します。
ただ、勘違いしてはいけないのは「お客様と仲良く親しげ接すればいいのか」というと、そうではないということです。時々サービス業で数回しか対応してもらっていないにも関わらず、やたらとくだけた口調で話してくる若い方に出会います。恐らく先輩たちが常連のお客様と親しく友達のように話しているのを見て、これが理想なのだと真似をしているのでしょう。でも、一見同じ友達のように接しているようでも、その中身は全く違います。来店回数の問題もありますが、それ以上に違うのは、正しく丁寧な接客ができるけれども敢えて意識的に軽く接しているのか、それとも基本ができておらず見よう見まねで軽く接しているのか、という点です。前者の場合は、くだけた対応のようでも、行動の節々に基本の礼儀正しさが垣間見えるものです。だから心地よく感じられるのです。この礼儀正しさが全く見えなければ、単に基本が身についていないだけであって、お客様を不快に感じさせてしまうでしょう。
茶道や武道の世界で「守破離(しゅはり)」という言葉があります。最初は基本の型をしっかり身に付けて守り、その後型を破ってより良く自分流にアレンジし、そしてその後は型を離れて自身のオリジナルの型をつくっていきなさい、というものです。そうすることによって、個性的なデザイナーやアーティスト、スポーツ選手なども生まれるのです。お客様と友達のように話しているベテラン接客員も「離」の段階なのです。
最初のお店に話を戻すと、この方はいつも大笑いするような会話をしながらも、例えば来店時、施術スタート時、見送り時などには、非常に丁寧な挨拶を欠かすことはありませんでした。まさに、基本が身に付いていながら、緩急つけてお客様との距離感のバランスをとっていました。
本日、この方からあたたかいお礼のお手紙を頂きました。どこに行かれても大丈夫な方だとは思いますが、これからも元気で活躍して頂きたいものです。